
“…”

“戻るか”

“?”

“あのおばあさんはいろいろつかまってここまで来たのか? 大変だな”

“あ!もうつかまる物がない!”

“大丈夫ですか? トイレですか?”
“はい”

“トイレはすぐそこだけどどうしよう”

“じゃあ僕がおぶって行きます”

“よっ”

“意外に重いんだな”

“着きました”

“ここからどうしよう”

“あら?”
“あ!”

母が偶然トイレに来ていた。
“ちょうど良かった”

僕がおばあさんを後ろから支えて母に下をお願いする。
“はい、いいですよ”
“中腰がきつい”

体育館のトイレは全て和式だったので大変だった。何とか終了。

おばあさんはどこから来ました?

“ちょっと認知症? そもそもこの状態で1人でトイレに来る? 家族は?”

“困った…この暗さで探すのは難しい。呼びかけてみようか?”

“こっちに連れていらっしゃい”

“!”

ストーブの周りにはお年寄りが集まっていた。
“こっちに連れていらっしゃい”

“あ!はい! 行きましょう”

“お願いします”

“あのお婆さんも、ストーブで暖かいし、お年寄りが多いから心強いだろう”

“でも最初に来た方向と逆のような? 家族いないのかな?”

“ふう”

“ここから見えるので気に留めておこう”

気に留めるも何も僕とおばあさんのトイレのタイミングが同じようだった。

その後もトイレを担当していた。
“すいません手伝って頂けますか?”
慣れてきて通りすがりの人に手伝ってもらう。

“…”

(明かりが点く)

(歓声と拍手)

“発電機でライトを点けたのか”

“ちょっと明るいと違うな”

“…”

(お腹が鳴る)

“お腹空いた。 21:30か”

“ビスケットの残り半分を食べよう”

“ごちそうさま” 完食

“うん?”

“いつの間にかドアが閉まった。少し寒さが和らいだ”

つづく